春の日差しが遠くに小さく見える海をキラキラと輝かせていた。
七ヶ浜町野外活動センタ応急仮設住宅は高台の上にある。田んぼを挟んで向こう側の高台は住宅街だ。
30年ほど前、大手不動産デベロッパによって開発される前はただの山だったそうだ。
「七ヶ浜はあまり人が住む場所がない町だったのですが、どんどん人が増えていって、今では人口密度(この場合は可住地人口密度のこと。実際に宅地にできる面積を人口で割ったもの。実態に近い居住人口の尺度である)は宮城県内でも上の方になっています」
小柄で目の大きな男性が教えてくれた。
小さな孫と一緒に、七ヶ浜町野外活動センタ応急仮設住宅での七ヶ浜畑(仮)活動説明会に参加していた方だ。
高台住宅地とこちらの高台の間には田んぼがあった。
津波で流された車や瓦礫がなくなり一見整地されているようにも見えるが農作業を再開するにはまだまだ時間がかかりそうな状況だ。
先月頃からボランティアによる田んぼの瓦礫除去作業が進められていて、畔道には白い土のう袋が点々と並べられていた。
近くのモクレンの樹には大きく膨らんだ白い蕾がたくさん付いていた。
今にもぱかりと花開きそうな状態だ。
畑を作ろうとしている場所は暫く手入れをされてなかったので雑草に覆われ、枯葉が散らばっていた。
近くには黄色いタンポポが顔を出していた。
ビニールハウスの骨組みが残る畑候補地でおじいちゃんが畑作りの計画を話しているので、3歳の孫娘は1人、周りにたくさん落ちている枯れ木の枝を持って遊んでいた。
危なっかしい手つきで枯れ枝を振り回していたので時々気が付いたおじいちゃんに怒られていた。
僕も何度かつつかれそうになった。
「何しているの?」と聞くと、小さな声で「つりが好きなの」と教えてくれた。
「お魚たくさん釣るの」と言いながら木の枝の先を地面に付けて、ひょいっと持ち上げる。どうやら大漁らしい。
「なにが釣れますか?」と僕は聞いた。
「赤いお魚、青いお魚、サンマ(と聞こえた)。黄色いお魚・・・」
「たくさん釣れますね~。緑のお魚や白いお魚は?」と言ったら無視されてしまった。
そのうちに2本の枝(釣竿)を両手に持ちだしたのだが、やっぱり両手だとうまく釣れないらしく、小さい声で「持ってて」と言って僕に細い方を貸してくれた。
僕も同じように釣り糸を垂れてみたけれど、何も引っかからなかった。
「お魚を・・・」女の子はとても声が小さく、何を言っているのか聞きとれなかった。
「ん~?魚たくさん釣れてる?僕はちっとも釣れんよ」のんびりと僕は聞いた。
「つなみがみんなもってっちゃった」と女の子が今までと同じ調子で言った。
「みーんなもってっちゃった」「んー・・・そうかあ」
いつの間にか女の子は釣竿を地面に突き刺す遊びを始めていた。
もともと畑に使おうとしていた土が盛られている場所なので柔らかいのだけど3歳の女の子にとっては少々固いらしく「刺して~」と小さな声で言った。
僕は受け取った枝を刺した。柔らかい土にすっと刺さった。
話が終わったおじいちゃんがこちらにやってきた。
「登って遊ぼう~」そう言っておじいちゃんの手を引いて、向こうに見える遊具の方へ歩いて行った。
補足)2005年時点での七ヶ浜町の宮城県内における可住人口密度は仙台市の3,026.83人/kmに次いで4番目の1,871.05人/km。宮城県内には35の市町村があり、可住人口密度が最も高いのは塩釜市の3,907.64人/kmで、最も低いのは七ヶ宿町で60.92人/kmである。
/* ----- 七ヶ浜 – 宮城 – 2012-4-15_11:32 – Nikon D700 ----- */
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